
先日、とある大型店で、
ショップで購入したばかりのアクセサリーを、
どこかに置き忘れてきてしまいました。
100円200円の品物ではないので慌てて電話、
ほどなく「届きました」の連絡がありました。
自宅からまだエンジンのぬくもりが残る車に再び乗り込み、
Uターンするようにお店に到着。
電話で言われた通りにカウンターに向うと、
あーーー、ショップの小さな袋が、
カウンターの中にあるのが見えました。
そうそう、それ!それ!それです!
カウンターの中の担当者の方に、
「すみません」と声を掛けると、
胸元のネームプレートで、
先ほどお電話を下さった、
Tさんご本人であることがわかりました。
だったら話は早いですよね。
Tさんは思ったよりは愛想の良い方ではありませんでした。
私と同じぐらいかもう少しご年配なのかな?
ですが、テキパキとした動きにキャリアを感じさせます。
「先ほどお電話いただいた笹崎です。」と告げると、
「あ、それではここにお名前をご住所を…」と、
管理簿のようなファイルを差し出されました。
私はかなりそそっかしいところがあるので、
こういう経験はそれなりに多いのですが(笑)、
相手の方が私が名前や住所を書き込むのを、
じっと対峙して待っているような状況だと、
申し訳ないような思いもあって、
やはり何か喋りたくなってしまいます^^
「さっき、家に帰ってから気が付いたんですよ。
買った品物が車の座席にないって。」
「ああ、そうだったんですか。」
「それがね~、このネックレスを買った後に入ったお店で、
いい感じの洋服があったので試着したときに荷物を足元に置いて、
それをそのまま忘れちゃったみたいなんですよねぇ。」
「うわぁ、そうでしたか。。。」
「それでね、そのあと…」
おっとっと、いや、ちょっと待てよ?
この人、忙しいんだもの、
こんな忘れ物を取りに来たお客の、
半ば言い訳みたいなおばちゃん的状況説明なんて、
はっきり言っていちいち聞いているヒマないよね^^
忘れ物を取りに来た人は、
だいたいがこんな感じで経緯等を語ると思うんですよ。
でもそれに心から付き合っていたら、
時間がいくらあっても足りないと思うんです。
その証拠にこのTさんが、
それについて私と語り合う気がないのは明白で(笑)、
私が何をどう言っても「それは大変でしたね」とか、
「そういうことってよくありますよね?」みたいな、
共感のセリフは一切出て来ないんです。
だからこのTさんが業務上、
あれやこれやの経緯や事情を語ってくるお客に対して、
事務的な応対をしているのはよくわかるんです。
「聞く気はない」っていうか、関わってられないっていうか。
私も店舗で対面販売のアルバイトをしたことがありますが、
まー、お客さんてのは、話が長いっ!
しかも延々と脈絡ないっ!(笑)
ですがこのTさんの受け答えは非常に絶品なのです。
演技力があって言葉にも感情的なメリハリがあって、
素晴らしいのです。
「聞く気」がないのに、「聞いてもらっている」感じが、
すごーくするんです。なので、心が満足するのです。
ときに驚いたように、
ときに共感するように、
「そうなんですか…」
「そうだったんですね?」
「そうだったんですか???」
いや~、うまい、うまい、うまい、うまい!!!
これと言って相手に関心があるわけでもなく、
そこそこ事務的な対応とわかっているのに、
なのに相槌が絶妙なので、
こちらの思いや言い分を、
きちんとキャッチしてもらっているような気持に、
なるんだねぇ、これが。
これは経験のなせるワザなのでしょうか?
長年のお客様対応で身に付いたノウハウなのでしょうか?
あーだ、こーだ、と語ってくるお客様の、
話しを長引かせず、
けれどしっかり受け止めてくれている感じがするやりとりは、
すごい!プロだ!と思いました。
要は、肯定の相槌をすぐに、そして明確に返すことなんだね。
加えて話し方に同情や共感の気持を感じさせる、
メリハリと強弱があること。
取りさばくように淡々と、
「あ、そうですか」とは言わずに、
深く沁みるように、
「あぁ…そうなんですか。。。」
とかみしめて言うこと。
それらをきちんと押さえていれば、
少々事務的な「聞き流しモード」でも、
話す方はそこそこ満足するってことなんだね。
これは電話応対にも言えると思うんです。
戦略的な演技って大事なんだと思います。
マインド(心のあり方)も、もちろん大事ですが、
今、この一瞬を気持ちよく過ごしていただく…
そのためのちょっとしたお芝居は、
相手のためでもあり、巡り巡って自分のためでもあります。
そしてそれをこなせるのがプロかな?って、
思った一件でした。
- 関連記事
-
スポンサーサイト