
文章を書くのは小さい頃から好きだったのですが、
小学生の頃の作文や感想文などと全く異なる思いを抱いたのが、
ちょうど30歳の時でした。
その頃私はあるアーチストの大ファンになりまして、
すぐにファンクラブに入り会報で知り合った友達と、
手紙のやりとりを始めたんです。
その頃はインターネットなどなくメールもなかったので、
会報の最後のページは会員からのお便りやイラスト、
そして「売ります」「買います」「文通希望」で埋め尽くされていて、
私はそこで自分と一番年齢が近い人を見つけ、
ぜひ熱い思いで一緒に盛り上りたいと思い、
文通を始めました。
ところが一部の熱烈なファンに支えられていたその中堅アーチストが、
こともあろうか、翌年、大ブレイクしちゃったんですよ。
本当はいいことなんです。確かに二人とも興奮状態でした。
でもね、これがファンの悲しい性とでも言うのでしょうか、
ライブの会場が大きくなって、
ホールツアーからアリーナツアーに変わったタイミングで、
なんとなく私の思いは冷めてきてしまったんですよね。
音楽性にもなんだか違和感を感じ始めて、
このあたりから私の嗜好は別な方向に急カーブしていくのですが、
文通相手の彼女はそうではなかったみたいで、
相変わらず熱くてイケイケノリノリの手紙が来るの。
ここで大きな齟齬が生じてしまい、
はてどうしたものか?と思い始めました。
もう今や私は、新曲を聞いてもなんとなく気乗りしないし、
彼女が書いてくる「最高!素晴らしい!本当に素敵!」には、
さすがに「キャー私もそう思う!」とは書けないの。
今思えば、素直に自分の気持ちを話して、
文通を終了しても構わなかったと思うのですが、
「長く文通しくれる人」というのが条件だったこともあり、
さすがにそんな勇気はありませんでした。
なので向こうから手紙が届くと、
夜のキッチンで便箋を前にして、うーん、うーん…
一体何をどう書いたらいいものやら。。。
「ねぇねぇ、今度の新曲も最高だよね?」
「ホントだよね!感動したよね!」
ダメだ、こりゃ完全に嘘っぱちだわ。
「ねぇねぇ、今度の新曲も最高だよね?」
「うーん、私はそんなに好きじゃない。」
これじゃ、相手が傷つくかしら???
「ねぇねぇ、今度の新曲も最高だよね?」
「ごめん、今回はまだ買ってないの。」
んなぁわけない(笑) バレバレな事は言っちゃいかんw
そうやって四苦八苦しながら文章をひねり出しているうちに、
私の文章って、全然自分の心の核心をつかんでいないな、と、
思うようになったの。
偽った事や虚飾は全く書いていないのですが、
それでも読み返すたびに「なんか違う」と思うわけよ。
私が言いたいのはこういう事ではない、とすぐに思うわけ。
それで書いては直し、書いては直し、
書き直す、書き直す、書き直す…で、
気が付いたらもう二週間以上たっていて、
発売直後だったからタイムリーだった最初の話題も、
今からそれについて返したのでは全然新鮮味がないし、
なのでまた根本的に話題を変えて、
書き直す、書き直す、書き直す。
数枚の返事を書くのに、なぜ毎回、
あそこまで固執してしまったのだろうと思いますが、
今思えばあの作業は、自分自身の深い見つめ直しであり、
自分の本心に気づき真正面から見据えて、
それを適切な言葉でストレートに表現するための、
訓練でもあったんですよね。
例えば温泉の話題を彼女が書いてきて、
それについて、
「○○温泉!いいですね!私もいつか行きたいと思っています」
と書くけど、なんかしっくりこない。私の言葉じゃない。
そう思うときは、本心からそう思っていないわけですよ。
で、自分の内面を深堀するように探りながら考えてみるわけ。
「あなたは本当に○○温泉に行きたいの?」って。
そして気が付くわけ。「行きたくないよ。別に興味もない」って。
そうだよ、私は別に温泉になんか興味もないし、
○○温泉に行きたいとも思ってなんかいないんだよ。
じゃ、それをどう伝えるか?
ひとつひとつの文章に対して常にそういう事を考えていると、
その時の私の文章は、
実にたくさんの箇所で自分の真実とかい離していて、
だからすぐに行き詰るし楽しくないし苦しいのだと思いました。
いやホント、文章がそこでピタッと止まってしまうときって、
たいてい自分の心にウソついているときなんだよね。
だからここで「100%=私」の文章を書くためには、
「自分は結局どうなのさ?」と、
自問に自問を重ねて様々な言葉に当てはめてみて、
「これでもない、これでもない」と言いながら、
納得する言い回しを探していく作業なんですね。
温泉に関しては、うーん、今ならなんて書くでしょう?
「ここで思い切ってカミングアウトしちゃうと、
実は私、温泉ってよくわからないんです。
今まであまり興味がなくて。。。
だから○○温泉いいよね?と言われた時に、
どうしよう、私、その温泉、全然知らない!と思って、
どう返信したらよいのか、迷っちゃいました」
長いけど、こんな感じでしょうかね(笑)
以上でも以下でもない、まさにこれがそのままの本心だね~(笑)
振り返ってみると本当にあの文通があったお蔭で、
私は短い時間でもスルスルと文章が出てくるようになったんです。
ということは、やっぱり何事もトレーニングと反復次第なんですね。
あとは、自分の文章のウソに気が付く嗅覚を磨いておくことでしょうか。
そうすれば、かなりのボリュームの文章でも、
スピーディに書けるようになると思います。
あ、もちろん、今は「質」の話をしているのではありませんよ(笑)?
それを言ったら、今日のブログは最初っから成立しないもんね(^_-)-☆!
今日は「ウソを消していく」お話でした。
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