解決を目指さない会話

今日は青森市で学校の先生たちを対象に、
「メンタルヘルスとコミュニケーション」というテーマで、
研修を行いました。
といっても、知識的な内容ではなく、
コーチングをベースにした会話の演習などを通じて、
安心感を感じたり、心が温かくなるお話の仕方などを、
体感していただきました。
いつも感心するのですが、
学校の先生は普段たくさんの生徒さんと接していらっしゃるので、
コミュニケーションの土台がとてもしっかりしています。
今日もグループワークなどでは、
あっという間にやりとりが活発になり、
あちこちの机から大きな笑いが聞こえてきました。
教育の現場を批判する意見なども目にしますが、
こうやって研修を通じてお会いする先生たちは、
とても前向きで熱心で、
どの方も生徒さんのことを真剣に考えていらっしゃいます。
実際の現場には、
私などにはわからないご苦労も大変多いと思いますが、
会話の工夫で解決できる何かがあるのでしたら、
ぜひ活用して欲しいと思いました。
皆さん、本日はありがとうございます。
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さて本日の研修では、
初歩のコーチングスタイルの基本に触れて、
指示や助言や励ましを控え、
「解決を目指さない会話」という説明をしました。
私達は何かの相談を受けると、
親身に相手の事を思って、
つい「こうしたらどうですか?」と、
自分の考えを言ってしまいます。
落ち込んでいる人には「大丈夫だよ」と励ましたり、
元気になって欲しくて、
「大したことじゃないよ」と勇気付けたり、
参考にして欲しい思いで、
自分の経験談などを詳細に話してしまいがちです。
ですが相手の方の相談の意図は様々です。
困っている様子があっても、
実際は共感して欲しかったり、
味方になって欲しかったり、
心の拠り所を求めていることも多いんですよね。
特にこころのエネルギーが落ちているときほど、
直接的な解決方法の教示はあまり耳に入りません。
相談を受ける側はこころも体も健康ですし、
第三者の視点として、
あれこれと思いつくこともあるのですが、
それが簡単にはそういかない深い心の闇を抱えているのが、
メンタル不全の方の特長でもありますから、
自分を基準にしてあれこれとアドバイスするよりも、
まずはじっくり、本音が出てくるまで、
相手のお話に耳を傾ける必要があります。
そのためには、相手の存在を認めてよいところを伝え、
お話しは遮らず、言い分は否定せず、
どんな小さい事でも「力になりたいからぜひ聞かせて」
という姿勢を明確に見せて、
本当の思いや、普段は見えてこない相手の方の環境などを、
少しずつじっくりと引きだしていく必要があります。
そう考えると、一度の会話や面談で、
結果を出そうと思うのはとても性急なやりかたで、
むしろ相手の方のモチベーションを下げてしまったり、
「結局話してもわかってもらえないのだ」といった、
あきらめを誘発させてしまうんじゃないかと思うんです。
私も会社員時代はリーダーとしてスタッフから、
相談を受けることがよくありました。
ですがそのときは、すぐに励まして助言をしていました。
これを今あらためてよく考えてみると、
相手の役に立ちたいという自分の思いの方が、
先行していた気がします。
つまり自分の存在感を優先して、
話を進めていたかもしれません。
本当は解決なんて目指さなくてよかったんです。
最初はただ話を聞いて、
「そうだね」「本当だね」「わかるよ」と頷いて、
味方になるから一緒に考えよう!という姿勢で、
リーダーと言う立場から相手の横に降りてきて、
共に困ったり悩んだりしてあげたらよかったな、と、
思います。
だってもし、そんな風にしてくれる人がいたら、
日々の葛藤を包み隠さず打ち明けたくなるし、
安心して話せる味方がそばにいる心強さが、
問題を自力で解決していく、
智恵とちからにつながると思うんです。
メンタルヘルスは度合いが重くなると、
体に影響が現れたり、
緊急性や強制力を伴う対応をしなければ、
ならなくなるときもあります。
ですが、そうなる前に、
日々の会話の小さな工夫で防げる何かがあるのなら、
今までのこだわりを捨てて、
まずはぜひ試して欲しいと思います。
